- 現行AIチップは、実際にはTSMC・SMIC・Intelのごく少数で製造されている。設計企業は増えているが、作れる企業はほぼTSMC一社(しかも台湾の工場)に偏っている。
- 先端ノード(3nm/5nm/7nm)は十数万枚/月規模でフル稼働状態。
スマホSoCやHPCと奪い合いになっている。 - ウェハより“パッケージング”が深刻な制約。
HBMを積めるラインが限られており、AIブーム全体のボトルネックになっている。 - 次の焦点は、Intel Foundry の再参入と、TSMC の地理的分散。
ファウンドリ競争が復活するかどうかは、AI計算コストの未来を左右する。
生成AIの競争は、モデルの賢さではなく、「どのノードに、どれだけの席(キャパ)を確保できるか」というきわめて物質的な争いとなってきている。
1. グローバルに使われる代表的 AI チップ
1-1. GPU / アクセラレータ(NVIDIA / AMD / Intel / Cerebras)
| チップ名 | 主用途 | 設計 | 製造 | プロセス / 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| NVIDIA A100 | LLM訓練・推論(旧主力) | NVIDIA | TSMC | 7nm (N7) |
| NVIDIA H100 | 現行主力GPU | NVIDIA | TSMC | 4nm系(4N) |
| NVIDIA H200 | HBM3e増強版 | NVIDIA | TSMC | 4nm系 |
| NVIDIA B200 / GB200 | 次世代Blackwell | NVIDIA | TSMC(台湾 + 米AZ Fab21) | 4NP(4nm系) |
| AMD Instinct MI300X/MI300A | GPU型AIアクセラレータ | AMD | TSMC | 5nm+6nmチップレット、3D積層 |
| Intel Gaudi 2 | AI訓練(A100世代と競合) | Intel | TSMC | 7nm |
| Intel Gaudi 3 | H100/H200対抗 | Intel | TSMC | 5nm (N5) |
| Cerebras WSE-3 | ウェハ丸ごとAIチップ | Cerebras | TSMC | 5nm、4兆トランジスタ |
結論:先端AI向けGPU/ASICのほぼ全てがTSMC製。
1-2. ハイパースケーラー自社設計(Google / AWS / Microsoft / Meta)
Google TPU 系
| チップ名 | 設計 | 製造 | ノード |
|---|---|---|---|
| TPU v4 | TSMC | 7nm | |
| TPU v5e | TSMC | 4nmと推測(公式非公開)(推測です) | |
| TPU v5p | TSMC | 5〜4nmと推測(推測です) | |
| TPU v6 “Trillium” | TSMC | 4nm世代と推測(推測です) |
Googleは完全内製ASICだが、製造は一貫してTSMC。
AWS Trainium / Inferentia / Graviton 系
| チップ名 | 設計 | 製造 | ノード |
|---|---|---|---|
| Inferentia / Inferentia2 | AWS(Annapurna Labs)+Alchip | TSMC | 先端ノード |
| Trainium(初代) | AWS+Marvell/Alchip | TSMC | 7nmと推測(推測です) |
| Trainium 2 | AWS+Alchip | TSMC | 5nm |
| Trainium 3 | AWS+Alchip | TSMC | 3nm(N3P)、HBM3e 144GB |
| Graviton CPU | AWS | TSMC | 16nm → 7nm → 5nm → 4nm |
AWSは 論理設計AWS → 物理設計Alchip → 製造TSMC の三層構造。
Microsoft Maia 系
| チップ名 | 設計 | 製造 | ノード |
|---|---|---|---|
| Maia 100 | Microsoft | TSMC | 5nm + CoWoS-S |
| Maia 2 | Microsoft | Intel Foundry | 18A / 18A-P(予定) |
Maia 2 は Intel Foundry の復帰を象徴する案件。
Meta MTIA 系
| チップ名 | 設計 | 製造 | ノード |
|---|---|---|---|
| MTIA v1 | Meta | TSMCと推定(公式非公開)(推測です) | 非公開 |
| MTIA v2 | Meta | TSMC | Reuters報道(テープアウトTSMC) |
クラウド4社(Google/AWS/Microsoft/Meta)は全てTSMCで製造している。
1-3. 中国圏:SMICが支える独自サプライチェーン
| チップ名 | 設計 | 製造 | ノード |
|---|---|---|---|
| Huawei Ascend 910B/910C | Huawei | SMIC | 7nmクラス |
| Biren BR100 | Biren Technology | TSMC | 7nm(規制により製造停止) |
制裁前はBirenがTSMCを使っていたが、現在は
SMIC 7nm が中国向けAIインフラの主力へ移行している。
■設計 vs 製造:権力は実質どこに集中しているのか
現在、構図はこのような形となっている(2025年12月時点)
設計企業(多数)
NVIDIA / AMD / Intel / Cerebras / Google / AWS / Microsoft / Meta / Huawei / Biren …
製造企業(極端に集中)
- TSMC:西側主要AIチップのほぼ全部
- SMIC:中国内需向け Ascend 系
- Intel Foundry(IFS):Maia 2 で復帰を狙う
- Samsung Foundry:AIデータセンター領域では限定的(推測)
ひとことでまとめると「設計は多様化しているが、製造はほぼTSMC独占」。生成AIのボトルネックは、この一点にある、というのが2025年12月の現状です。

小学生のとき真冬の釣り堀に続けて2回落ちたことがあります。釣れた魚の数より落ちた回数の方が多いです。
テクノロジーの発展によってわたしたち個人の創作活動の幅と深さがどういった過程をたどって拡がり、それが世の中にどんな変化をもたらすのか、ということについて興味があって文章を書いています。その延長で個人創作者をサポートする活動をおこなっています。