AIチップ一覧と現状まとめ——設計と製造はどこがおこなっているのか(2025年12月時点)

  1. 現行AIチップは、実際にはTSMC・SMIC・Intelのごく少数で製造されている。設計企業は増えているが、作れる企業はほぼTSMC一社(しかも台湾の工場)に偏っている。
  2. 先端ノード(3nm/5nm/7nm)は十数万枚/月規模でフル稼働状態。
    スマホSoCやHPCと奪い合いになっている。
  3. ウェハより“パッケージング”が深刻な制約。
    HBMを積めるラインが限られており、AIブーム全体のボトルネックになっている。
  4. 次の焦点は、Intel Foundry の再参入と、TSMC の地理的分散。
    ファウンドリ競争が復活するかどうかは、AI計算コストの未来を左右する。

生成AIの競争は、モデルの賢さではなく、「どのノードに、どれだけの席(キャパ)を確保できるか」というきわめて物質的な争いとなってきている。


1. グローバルに使われる代表的 AI チップ

1-1. GPU / アクセラレータ(NVIDIA / AMD / Intel / Cerebras)

チップ名主用途設計製造プロセス / 特徴
NVIDIA A100LLM訓練・推論(旧主力)NVIDIATSMC7nm (N7)
NVIDIA H100現行主力GPUNVIDIATSMC4nm系(4N)
NVIDIA H200HBM3e増強版NVIDIATSMC4nm系
NVIDIA B200 / GB200次世代BlackwellNVIDIATSMC(台湾 + 米AZ Fab21)4NP(4nm系)
AMD Instinct MI300X/MI300AGPU型AIアクセラレータAMDTSMC5nm+6nmチップレット、3D積層
Intel Gaudi 2AI訓練(A100世代と競合)IntelTSMC7nm
Intel Gaudi 3H100/H200対抗IntelTSMC5nm (N5)
Cerebras WSE-3ウェハ丸ごとAIチップCerebrasTSMC5nm、4兆トランジスタ

結論:先端AI向けGPU/ASICのほぼ全てがTSMC製。


1-2. ハイパースケーラー自社設計(Google / AWS / Microsoft / Meta)

Google TPU 系

チップ名設計製造ノード
TPU v4GoogleTSMC7nm
TPU v5eGoogleTSMC4nmと推測(公式非公開)(推測です)
TPU v5pGoogleTSMC5〜4nmと推測(推測です)
TPU v6 “Trillium”GoogleTSMC4nm世代と推測(推測です)

Googleは完全内製ASICだが、製造は一貫してTSMC


AWS Trainium / Inferentia / Graviton 系

チップ名設計製造ノード
Inferentia / Inferentia2AWS(Annapurna Labs)+AlchipTSMC先端ノード
Trainium(初代)AWS+Marvell/AlchipTSMC7nmと推測(推測です)
Trainium 2AWS+AlchipTSMC5nm
Trainium 3AWS+AlchipTSMC3nm(N3P)、HBM3e 144GB
Graviton CPUAWSTSMC16nm → 7nm → 5nm → 4nm

AWSは 論理設計AWS → 物理設計Alchip → 製造TSMC の三層構造。


Microsoft Maia 系

チップ名設計製造ノード
Maia 100MicrosoftTSMC5nm + CoWoS-S
Maia 2MicrosoftIntel Foundry18A / 18A-P(予定)

Maia 2 は Intel Foundry の復帰を象徴する案件。


Meta MTIA 系

チップ名設計製造ノード
MTIA v1MetaTSMCと推定(公式非公開)(推測です)非公開
MTIA v2MetaTSMCReuters報道(テープアウトTSMC)

クラウド4社(Google/AWS/Microsoft/Meta)は全てTSMCで製造している。


1-3. 中国圏:SMICが支える独自サプライチェーン

チップ名設計製造ノード
Huawei Ascend 910B/910CHuaweiSMIC7nmクラス
Biren BR100Biren TechnologyTSMC7nm(規制により製造停止)

制裁前はBirenがTSMCを使っていたが、現在は
SMIC 7nm が中国向けAIインフラの主力へ移行している。


■設計 vs 製造:権力は実質どこに集中しているのか

現在、構図はこのような形となっている(2025年12月時点)

設計企業(多数)

NVIDIA / AMD / Intel / Cerebras / Google / AWS / Microsoft / Meta / Huawei / Biren …

製造企業(極端に集中)

  • TSMC:西側主要AIチップのほぼ全部
  • SMIC:中国内需向け Ascend 系
  • Intel Foundry(IFS):Maia 2 で復帰を狙う
  • Samsung Foundry:AIデータセンター領域では限定的(推測)

ひとことでまとめると「設計は多様化しているが、製造はほぼTSMC独占」。生成AIのボトルネックは、この一点にある、というのが2025年12月の現状です。


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