雨の日こそ洗車日和である——雨の日に洗車して拭き上げを捨てるという逆転の発想

洗車日和と聞くと、多くの人は晴れた休日を思い浮かべる。

青空。明るい駐車場。乾いた路面。
たしかに、気分としては最高である。

しかし、洗車の実務として考えると、晴天は必ずしも好条件ではない。
特に梅雨から夏にかけては、むしろ晴れた日のほうが危ないことも多い。

真夏の炎天下は危険度MAXである。

ボディは熱くなる。
水はすぐ乾く。
シャンプーもケミカルも乾く。
水道水が乾けば水滴跡になる。
酸性やアルカリのケミカルが乾けば、ムラや曇りの原因にもなる。

洗車に必要なのは、青空ではない。
本当に必要なのは、乾かない環境である。

その意味で、梅雨から夏の洗車では、雨の日こそ狙い目になることがある。

もちろん、警報級の悪天候に出かけましょう、という話ではない。
雷、横殴りの雨、強風、警報級の大雨。
そういう日は洗車どころではない。

ここで言っているのは、風の弱い、穏やかな雨の日のことである。
そして、できれば屋根付きの洗車場を使える場合の話である。

洗車の本当の敵は、雨ではなく風と日光である

洗車で本当に怖いのは、雨そのものではない。

むしろ洗車の二大敵は、風と日光である。

雨は洗車の味方だと僕は思っている。

風は砂埃を運ぶ。
クロスやミットに粒子を付ける。
噴霧したケミカルを狙った場所から飛ばす。
泡や水の乾燥も早める。
タオルや道具も落ちやすくなる。

風が強い日の洗車は、単にやりにくいだけではない。
傷のリスクが上がる。

日光も厄介である。

日光はボディを熱くする。
水を乾かす。
シャンプーを乾かす。
ケミカルを乾かす。
作業者の体力も乾かしてしまう。

特に夏の照りつける直射日光は、洗車を時間との戦いに変えてしまう。
ゆっくり観察する余裕がなくなり、あわてて流し、急いで拭くことになる。

この「急ぐ」という状態が、洗車ではかなり危ない。

その点、雨の日は少なくとも日光がない。
車も冷えている。
走行して洗車場に着いても、ボンネットやルーフやガラスが熱を持っていないのだ。

晴れた日なら、到着してすぐ洗車を始めるのは危ないことがある。
まずホットになった車を冷ます必要がある。
しかし雨の日なら、屋根付きブースに入れば、すぐに洗車を始められる。

雨は、条件次第で味方になる。
風と日光こそ、洗車の敵である。

雨は車を汚すだけではない

「雨が降ると車が汚れる」とよく言われる。

たしかに、それは半分正しい。

小雨はよくない。
土埃や花粉が乗った車に、少しだけ雨が降る。
すると、ボディの上の汚れが中途半端に濡れる。
水滴のふちに埃が集まる。
そのまま乾く。

あの、少しだけ雨が降った後の、ゾッとするような汚れ方である。

水滴の跡の周りに、土埃が輪のように集まっている。
乾くとさらに汚く見える。
車全体がまだらに汚れて、見るだけで嫌になる。

これは多くの人が経験していると思う。

しかし、だからといって「雨そのものが悪い」と考えるのは少し違う。

水道水は、乾くと水シミの原因になりやすい。
水道水にはミネラル分が含まれているからである。
だから洗車では、水道水を乾かさないことが大事になる。

では、雨水はどうか。

雨は、もともとは蒸発した水が再び落ちてきたものである。
その意味では、水道水よりも純水に近い。

ただし、雨は空気中を通って落ちてくる。
だから、埃、花粉、排ガス成分などを含むことはある。
特に降り始めの雨や、少量の雨は汚れを含みやすい。

つまり、雨は「水道水のようにミネラルを多く含む水」ではない。
しかし、「完全にきれいな水」でもない。

ここで大事なのは、雨そのものを善悪で見ることではない。
雨の降り方と、その後の乾き方である。

降り始めの雨や、にわか雨には、空気中の汚れが混ざりやすい。
そして雨量が少ないと、その汚れを流す力も足りない。

問題はここである。

最悪なのは、汚れた車に少量の雨が降り、そのまま乾くことである。
雨が悪いというより、車上の埃、少ない雨量、乾燥。この組み合わせが悪い。

一方で、まとまった雨は少し違う。

雨量があれば、空気中の汚れもある程度洗い流される。
車の上に乗っていた軽い土埃や花粉も流れやすい。
特にコーティングや簡易保護が効いている車では、水が汚れを抱えて流れていく。

雨上がりに、車がむしろ少し綺麗になっていたことはないだろうか。

あれは気のせいではない。
まとまった雨は、軽い汚れを流してくれることがある。

雨は車を汚すこともある。
しかし、車を洗い流してくれることもある。

雨が汚いから車が汚れるのではない。
汚れた車を、少量の雨が中途半端に濡らして乾かすから汚れるのである。

だから私は、車の上に土埃が乗っていて、少量の雨が来そうなときは、雨の前に洗ってしまうことがある。

車の上がきれいな状態なら、雨が降っても汚れ方はかなり違う。
雨を避けるのではなく、雨の前に汚れを減らしておく。
そう考えると、雨との付き合い方が変わってくる。

雨が汚れを含むからこそ、雨の日に洗う意味がある

雨は、車を汚すことがある。
これは事実である。

空気中の埃、花粉、排ガス成分、油分。
そういうものを雨が拾い、車に運んでくることはある。

だから、雨を浴びた車をそのまま放置して乾かせば、汚れは残る。
雨染み、油膜、黒ずみの原因にもなる。

しかし、ここで結論を間違えてはいけない。

雨が汚れを含むから、雨の日に洗車しても意味がないのではない。
雨が汚れを含むからこそ、乾く前に洗う意味がある。

雨でふやけた汚れを落とす。
乾く前に流す。
隙間に残った汚れ水を抜く。

これが雨の日洗車の考え方である。

問題は、雨に濡れることではない。
濡れた汚れが乾いて残ることである。

洗車は楽しい。拭き上げは重労働である

洗車の楽しい部分は、洗うところだと思う。

泡をかける。
ミットを滑らせる。
汚れが流れる。
水をかけると車が変わっていく。

ここは楽しい。

しかし、拭き上げは別である。

水を吸った大判タオルは重い。
ルーフを拭く。
ボンネットを拭く。
サイドを拭く。
リアを拭く。

やっと終わったと思ったら、ミラーから水が垂れる。
ドアハンドルからも垂れる。
ナンバー周りからも垂れる。
バックドアからも出てくる。
リアワイパーの根元からも出てくる。

いわゆる「永遠に水が出続ける場所」との戦いである。

洗車が大変になる理由のかなりの部分は、拭き上げにある。

しかも、拭き上げはその場で終わらない。

大判タオルを使えば、帰宅後に洗濯しなければならない。
水を吸った重いタオルを運び、洗った後は乾かす場所も必要になる。

つまり拭き上げには、作業中の負担だけでなく、帰宅後の負担まで付いてくる。

雨の日は、拭き上げを捨てられる

雨の日に洗車しても、外に出ればまた濡れるわけだから拭く意味はない。

ならば、外板全面の拭き上げを捨てればよい。

これは手抜きではない。
目的を変えるのである。

雨の日は、乾いた仕上がりを作る日ではない。
汚れを落とし、ケミカルを流し、水の動きを観察する日である。

拭き上げを捨てると、洗車は一気に軽くなる。

大判タオルを持ち込まなくていい。
水を吸って重くなったタオルを扱わなくていい。
帰宅後に大判タオルを洗濯しなくていい。
乾かす場所にも困らない。

有料洗車場なら、これには時間の意味もある。

晴れた日なら、洗った後に拭き上げの時間が必要になる。
ブロワーで隙間水を出し、それをまた拭く。
後出し水を待ち、また拭く。

しかし雨の日なら、外板を完璧に乾かす必要がない。
その時間を、洗浄とすすぎに使える。

雨の日洗車の大きな価値は、拭き上げそのものだけでなく、拭き上げに付いてくる面倒ごとまで省略できることにある。

雨の日洗車は、車を乾かす洗車ではない。
乾かさなくてよい日を選ぶ洗車である。

ただし、乾燥不要と排水不要は違う

雨の日は、外板を乾かす必要はない。

しかし、水が溜まる場所まで放置してよいわけではない。

給油口。
ミラー内部。
ドアハンドル。
リアワイパー根元。
テールランプ周辺。
ナンバー周り。
バックドアの隙間。

こういう場所は、水が自然に抜けにくい。
しかも、そこに残る水は、洗剤や汚れを含んでいることがある。

雨で外板が濡れることと、汚れた水やケミカルを含んだ水が隙間に残ることは別問題である。

雨の日に必要なのは、乾燥ではなく排水である。

外板は乾かさない。
でも、閉じた場所の水は抜く。

この区別が大事である。

雨の日に向いているのは、落として流す作業である

雨の日は、コーティングを仕上げる日ではない。
ワックスを塗る日でもない。

雨の日に向いているのは、落とす作業である。

酸性でスケールを攻める。
アルカリで交通膜を落とす。
鉄粉除去をする。
ガラスの水挙動を見る。
ワイパー周辺の汚れを見る。
リア周りの垂れ跡を確認する。

やることをやる。
十分にすすぐ。
外板は拭かずに帰る。

これでよい。

雨の日は、仕上げの日ではない。
落として、流して、観察して、帰る日である。

雨の日に向いていない作業もある

もちろん、雨の日に何でもできるわけではない。

施工後に濡らしたくないコーティング。
定着時間が必要な保護剤。
乾いた状態でムラを見たい仕上げ作業。
ガラス撥水剤やワックスの本施工。

こういう作業には向かない。

雨の日は「塗る日」ではなく、「落とす日」と考えたほうがよい。

保護剤やコーティングは、雨のない曇りの日に回す。
雨の日は洗浄と除去を進める。

こう分けると、梅雨から夏の洗車計画がかなり楽になる。

むしろ、雨の日をメインの洗車日にしてもよい。
雨の日には、落とす。流す。観察する。

雨のない曇りの日は、サブの施工日である。
そこでは、雨の日にできない作業をする。
保護剤を塗る。コーティングを施工する。乾いた状態でムラを見る。

晴れの日は、気分はよい。
しかし夏の洗車条件としては、むしろ下位である。

屋根付き洗車場があると、雨の日は穴場になる

この話には条件がある。

雨の日洗車が本当に楽になるのは、屋根付きの洗車場を使える場合である。

屋根があれば、作業中に雨を直接受けない。
ケミカルも流されにくい。
道具も濡れにくい。
屋根下で状態確認もできる。

屋根付き洗車場を探すのは、意外と難しい。
だから誰にでも同じようにすすめられる話ではない。

しかし、近くにそういう場所があるなら、雨の日はかなり強い。

多くの人は、雨の日に洗車しても意味がないと考える。
だから雨の日、特に雨の夜は、屋根付きブースが空きやすい。

晴れた休日に混雑する洗車場でも、雨の日は落ち着いて使えることがある。

屋根付きブースがあり、純水が使え、ブロワーや掃除機もある。
そういう洗車場が近くにあるなら、雨の日はかなりの穴場である。

雨の日洗車のメリットは、乾燥リスクが低いことだけではない。
空いていることも、大きなメリットである。

純水なら最高。水道水でも条件次第で味方になる

理想は、屋根付きで純水が使える洗車場である。

純水なら、すすぎ後のミネラル残りを減らせる。
雨の日洗車との相性はとてもよい。

ただ、水道水だから雨の日洗車が成立しないわけではない。

夏の晴天下で水道水を使うより、雨の日のほうが水は乾きにくい。
乾きにくいということは、水跡やケミカル乾燥のリスクが下がるということでもある。

さらに、雨の日にはもうひとつ利点がある。

水道水ですすいだとしても、その後にまとまった雨を受ければ、ボディ表面に残った水道水は雨で薄まり、流されていく。

これは、自然の雨による簡易的な純水置換に近い。

もちろん、管理された純水と同じではない。
雨水は、水道水より純水に近い。
しかし、完全な純水ではない。
空気中を通って落ちてくる以上、多少の埃や花粉、排ガス成分を含むことはある。

それでも、夏の晴天下で水道水がそのまま乾くよりは、はるかに条件がよい。
水道水に含まれるミネラル分が、雨によって薄まり、流されるからである。

大事なのは、少量の雨ではなく、ある程度まとまった雨である。
雨量があれば、水道水の残留を自然に流してくれる。

しかし、ここは誤解してはいけない。

水道水ですすいだ後に雨が止んでいるなら、拭き上げは必要である。
雨がすぐ止みそうな場合も同じである。

水道水がボディの上に残ったまま乾けば、当然、水滴跡やスケールの原因になる。
「雨の日だから拭かなくてよい」という話ではない。
「洗車後もまとまった雨が降り続き、水道水を薄めて流してくれるなら、拭き上げを捨てやすい」という話である。

つまり、水道水環境では判断が分かれる。

洗車後もしばらく雨が降り続くなら、雨が水道水を流してくれる。
この場合は、晴天時よりかなり安全である。

一方で、雨が止んでいる。
雨上がりで、このあと乾いていく。
日が出そうである。
風で急速に乾きそうである。

こういう場合、水道水すすぎのまま放置するのは危ない。
その場合は、通常どおり拭き上げるべきである。

純水なら最高。
まとまった雨も、水道水をそのまま乾かさないという意味では味方になる。
しかし、水道水で終わって雨が止むなら、拭き上げは必須である。

問題は、水の種類だけではない。
乾かすか、乾かさないかである。

雨の日は、車の弱点を可視化する

雨の日には、乾いた状態では見えないものが見える。

ガラスの油膜。
ワイパー停止位置の汚れ。
リアワイパー下の垂れ跡。
ミラー下の後出し水。
ドアハンドル下の筋。
ナンバー周りの水溜まり。
リア周りの水の流れ。

水の動きは、車の状態を教えてくれる。

きれいなガラスは、水が均一に乗る。
油膜のあるガラスは、水がまだらになる。
汚れが溜まる場所からは、雨のたびに垂れ跡が出る。

晴れの日には見えないものが、雨の日には見える。

雨の日洗車は、仕上げの日ではない。
診断の日でもある。

悪天候の日に無理をする必要はない

ここまで雨の日洗車の利点を書いてきたが、悪天候に逆らう必要はない。

雷。
横殴りの雨。
強風。
警報級の大雨。
移動そのものが危ない天候。

こういう日は、洗車どころではない。

雨の日洗車に向いているのは、風の弱い、穏やかな雨の日である。

雨は味方になりうる。
しかし、強風と悪天候は敵である。

雨の日洗車は、雨に逆らう洗車ではない

雨の日洗車は、雨の中で無理に車をピカピカに仕上げる作業ではない。

雨を前提にして、洗車を軽くする方法である。

外板はどうせ濡れる。
だから、拭き上げを捨てる。

そのかわり、汚れを落とす。
ケミカルを残さず流す。
水の動きを観察する。
自然に水が抜けない場所だけ処理する。

ただし、拭き上げを捨てられるのは、条件がそろう場合である。
純水ですすげる。
または、水道水ですすいだ後も、まとまった雨が降り続く。
そういう場合は、水を乾かさずに済む。

逆に、水道水ですすいだ後に雨が止むなら、拭き上げは必要である。
雨の日洗車とは、水道水を乾かしてよいという意味ではない。

梅雨から夏にかけて、晴れの日だけを洗車日だと思っていると、洗車はつらくなる。

晴天は気持ちがいい。
しかし、洗車にとっては日光と乾燥が強すぎることがある。

風の弱い雨の日。
屋根付き洗車場。
十分なすすぎ。
純水、またはまとまった雨による自然な置換。
拭き上げを捨てる判断。

この条件がそろうなら、雨の日こそ洗車日和になる。

雨の日は、仕上げの日ではない。
落として、流して、観察して、帰る日である。

(了)


深水英一郎

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