YouTubeは課金すれば広告が消えるのに、なぜAmazonは消えないのか

YouTubeでは、月額料金を支払うことで広告を完全に表示しない状態にできます。一方でAmazonでは、プライム会員として年会費を支払っていても、検索結果には「スポンサー」と表示された商品が並び続けます。

YouTubeは課金すれば広告が消えるのに、なぜAmazonは消えないのか

この違いは、一見すると不思議に感じられます。お金を払っているのに、なぜ広告を見せられるのかと疑問に思う人も多いはずです。

YouTubeの広告は視聴体験を中断する

YouTubeの広告は、動画の再生前や途中に挿入されます。そのため、視聴していた流れはいったん止まり、意図しない時間の使われ方が発生します。

UXの分野では、こうした広告は「中断型」と呼ばれます。ユーザーは動画を見たいのであって、広告そのものに時間を割く目的で訪れているわけではありません。

このため、YouTube Premiumで広告を非表示にする価値は理解しやすいものです。広告がなくなることで、視聴の流れが保たれ、自分の時間をコントロールしやすくなります。

実際、YouTubeの広告を全部みていたら、かなりの時間が奪われてしまいます。そのため、私もYouTube Premiumに課金しています

Amazonの広告は検索結果の構成要素である

Amazonの広告は、性質が大きく異なります。

商品名やカテゴリで検索すると、スポンサー商品が表示されますが、それによって操作が妨げられたり、体験が止まったりすることはありません。

ユーザーは買い物を目的として検索しており、広告商品もその中の候補の一つとして並んでいます。見るかどうか、比較するかどうかは、常にユーザーが判断できます。

Amazonの広告は、行動を中断させる存在ではなく、検索結果を構成する情報の一部として設計されています。

両者が提供している価値は最初から異なる

この違いは、ビジネスの前提に由来します。

YouTubeが主に扱っているのは、ユーザーの視聴時間と注意です。広告はその注意を広告主に提供する仕組みであり、視聴体験と衝突しやすい性質を持っています。

一方でAmazonが扱っているのは、購買行動そのものです。検索結果に表示される広告は、売り手と買い手を結びつける機能に近い役割を果たしています。

そのため、Amazonにとって広告を完全に消すことは、単なる体験改善ではなく、検索機能の考え方そのものを変えることにつながります。結果として、広告を非表示にするプランは用意されていません。

なぜAmazonは二重に課金しているように見えるのか

プライム会費と広告収入を並べると、Amazonがユーザーから二重にお金を取っているように見えることがあります。

ただし、プライム会費の対価は明確です。配送の速さや手数料の削減、動画や音楽といった付加サービスが含まれています。検索結果の広告は、これらの特典には含まれていません。

広告はAmazon側の収益手段であり、検索体験を大きく損なわない限り、強い不満につながりにくい構造になっています。

Prime Videoに広告が入ったことが示すもの

近年、Prime Videoには広告が導入され、追加料金を支払うことで非表示にできる仕組みが始まりました。

これは一貫性のない判断ではありません。Prime Videoは、YouTubeと同じく視聴体験を中心としたサービスであり、映像の途中に広告が入ると満足度が下がりやすいためです。

Amazon自身も、中断型の広告が好まれにくいことを理解したうえで、サービスごとに広告の扱いを分けています。

Amazonの広告事業はすでにYouTubeを超えている

Amazonの広告事業は急速に成長しており、広告売上はYouTubeを上回っています。Amazonは表向きにはEC企業ですが、実態としては世界でも有数の広告事業者です。

YouTubeは、課金によって広告を消す価値を提供しました。一方Amazonは、広告を検索体験の一部として受け入れられる形にしました。

この差は、技術力や営業力というより、広告をどのように体験に組み込むかという設計の違いによるものと考えられます。広告の結果は、サービス設計の段階でかなりの部分が決まっていたと言えそうです。


(了)

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